ダウン症の娘への暴力が止められない。叩くと気持ちが楽になる
(再びパーソナリティ)
加藤諦三:
今ねえ、あのね、
相談者:
はい
加藤諦三:
先生に、ほんっとに、いいアドバイス、
相談者:
はい
加藤諦三:
伺いましたねえ。
相談者:
はい
加藤諦三:
あのお、日記なんかね、
相談者:
はい
加藤諦三:
つけるっていうのも、すごい大切なことなんですよ。
相談者:
はい
加藤諦三:
あの、そこは、もう、誰、人に見せるものじゃないですから、本当の自分っていうものを、さらけだしていいんですよ。
相談者:
あー、書いていいんですね。
加藤諦三:
もう、人に見せんじゃないですから。
相談者:
分りました。
加藤諦三:
神さまにも、ていうか、もう、ほんとに自分だけです。
本当の感情を、
相談者:
はい
加藤諦三:
その、
相談者:
はい
加藤諦三:
日記に、
相談者:
分りました。
加藤諦三:
ええ
相談者:
書いてみます。
加藤諦三:
ですからね、
相談者:
はい
加藤諦三:
人に優しく。
それも大切ですけども、同様に、自分に、優しくも大切なことです。
相談者:
わー
それがなかなかですけど・・ま、少しづつ、
加藤諦三:
ええ
相談者:
あのお、忘れないで、その言葉を忘れないようにして、ちょっと、あのお、も、ほんと、あんまり頑張り過ぎないようにして、やっていきたいと思います。
加藤諦三:
はい、どうも失礼しますう。
相談者:
どうも、ありがとうございました。
加藤諦三:
「あるべき」という暴君に心を支配されないこと。
(内容ここまで)
相談者の苦労は言うに及ばず。
通り一遍の労いの言葉なんか軽過ぎて掛けるのを憚(はばか)られる。
個人的には感謝。
だって、確率論的に、誰かが受け持たなければならない人類の宿命だと思うから。
その宿命をわたしが受け持っていないのは、受け持ってくれてる彼女や誰かのおかげ。
ところで夫の君はどうした?
逃げ出したか。
ま、いいけど。
近親の介護者(*)による暴力ってよく聞く話だけど、そのメカニズムがよく分った。
(*) 介護職員とかによる虐待は論外。てか、まったく別の問題だ。
頭ではいけないことだと分っていながら、止められない。
快感すら覚える、
優しくなれる。
「それまで感じたことのない、スーッと、身体が軽くなった気分」
実に生々しいじゃないか。
エスカレートしていくわけだ。
さて、
なんとなく、
めでたし、めでたしで終わった今日の相談。
でも、電話を切った瞬間に戻される凄まじい日常に、彼女はモチベーションを保てるかしら。
少々気持ちのコントロールが出来たとしても、そんなこととはお構い無しに、娘の退行は日に日に進んでいく。
途中からのやりとりを、少し違和感を感じながら聞いてた。
それは、彼女の迎合的な態度。
オーバーなリアクション。
復唱して、書き留めてる様子まで演出する。
いや、彼女に作為的なものがあるって言ってんじゃない。
たぶん、本心に違いないし。
自分の気持ちの一端を分ってもらえた嬉しさっていうか、
きちんと話を聞いてくれた感謝というか。
健気にもそれを一生懸命相手にも伝えようとしているの。
それだけ飢えてたってこと、こういう会話に。
伺えるのは、彼女が孤立している状況と、内面的には孤独感。
在宅介護の一つの側面として、介護者の孤立ってのがある。
一人で介護していると、外出もままならず、近所づき合いすら遠のき、社会から孤立していってしまう。
彼女だって、せいぜい30分程度の近所への買い物が限度。
人とまともに会話したことのない日が何日も続く。
鏡の自分に向かって、「おはよう」
誰にも言えない心の内を、誰が読むわけでもない日記に綴る。
いや、分るよ。
こういうのが精神療法として確立されてるってのはさ。
でもね、今の彼女にとっては孤独を再認識するだけじゃない?
鏡に「おはよう」って言ったら、虚しいに決まってる。
誰にも読まれない日記なんて、続けられるわけがない。
だって、すでに、今現在のやってる行動すべてが、発する言葉が、誰にも知られることがないんだもんね。
ほんとに、それしか術がないんだったら、し方ないけど、彼女を助けられる人がいる。
次女だ。
話には出てこなかったけど、どれくらいの行き来があるのかしら。
別に介護のサポートをしろって言うんじゃない。
それは相談者だってきっと望んでない。
彼女が勇気を出して産んだ次女。
ずっと一緒に分かち合って来た次女。
母と姉に、後ろめたさなんて、まったく持つ必要はない。
相談者にとっては、次女が普通に暮らしてくれてることが救いなの。
それこそ、週一の電話が間違いなくオアシスになる。
ダウン症の早期退行
今日の相談者がサラッと言ってた、早期退行について調べてみた。
ダウン症に見られる、40歳代、早い人だと、なんと20歳代から見られる老化現象。
シワや、白髪などの、外見的老化から、体力の低下、知的・認知能力の低下、あるいは免疫症、白内障などの高齢者に起こり易い疾患の発症まで、まさに一般的な老化現象とされるものが、壮年期、あるいは青年期から起こる。
また、ダウン症患者の40歳以降のアルツハイマー病の発症率も非常に高いとされる。
<参考>
ダウン症候群の早期老化の診断と評価 1995
菅野, 敦; 池田, 由紀江; 橋本, 創一
東京学芸大学紀要. 第1部門, 教育科学, 46: 329-343