就職を前に不安を覚える発達障害の18歳
テレフォン人生相談 2019年8月26日 月曜日
2歳で発達障害の診断を受けて、医者や家族など周囲の支援を受けながらここまでやってきて、就職先も決まったものの、自分のトンデモ発言や振る舞いなどを自覚していて、上手くやっていけるかどうか不安を覚える。
パーソナリティ: ドリアン助川
回答者: 高橋龍太郎(精神科医)
相談者: 男18歳 父49歳 母48歳 妹15歳
ドリアン助川:
もしもし?テレフォン人生相談です。
相談者:
はい
ドリアン助川:
・・
はい、よろしくお願いします。
相談者:
よろしくお願いします。
ドリアン助川:
え、今日どんなご相談ですか?
相談者:
あの、来月・・から、就職するんですけど、
ドリアン助川:
来月から就職?・・はい
相談者:
あのお・・小さい頃、ぼく、発達障害っていう病気って言われて・・
ドリアン助川:
うん
相談者:
人と違ったこと言っちゃったりとか・・行動してしまう、のが、子どもの頃からあってですね、
ドリアン助川:
うん
相談者:
・・ちょっと、不安になっちゃったんです。
ドリアン助川:
発達障害ね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
えっと今おいくつですか?
相談者:
今は18歳です。
ドリアン助川:
18歳
相談者:
わたしは。
ドリアン助川:
はいはい、18歳
相談者:
妹とは・・妹は15歳です。
ドリアン助川:
うん、妹さん15歳ね?
お父さんとお母さんはいらっしゃるの?
相談者:
はい
ドリアン助川:
はい
相談者:
父は49で、母は40、は、8歳です。
ドリアン助川:
はあい。じゃ、4人家族ね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
はい、それで・・えー、いよいよ就職ということなんですね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
はい
どんな感じのお、就職先なの?
相談者:
農業・・
ドリアン助川:
うん
相談者:
の、ビニールハウスで、
ドリアン助川:
うん
相談者:
障害を持った人たちと一緒に働くっていう・・
ドリアン助川:
うーん、あ・・
相談者:
6時間・・
ドリアン助川:
あ・・
相談者:
フルタイムで◆#$
ドリアン助川:
えー、じゃ、1日6時間ビニールハウスで、農作物を作って行く仕事ですね?
相談者:
はい、座ってやるので楽です。
ドリアン助川:
・・ん?、座って・・
相談者:
&#△
ドリアン助川:
やる仕事なの?
相談者:
はい
ドリアン助川:
ふうん
えー、それで、発達障害という、ま、診断というか、そういう風な言葉が出て来たのはいつぐらいからですか?
相談者:
えーと、2歳です。
ドリアン助川:
2歳?
えー、それは、精神科のお医者さんか何かに言われたの?
相談者:
小児神経
ドリアン助川:
小児神経というとこで?、あ、はあ
相談者:
あの、それで、訓練したりとかしました。
ドリアン助川:
ふうーん
相談者:
字とか・・
ドリアン助川:
あー、そ・・
相談者:
言葉とか。
ドリアン助川:
ふうーん
相談者:
運動とか。
ドリアン助川:
なるほど。それで・・
相談者:
はい
ドリアン助川:
人と違ったこと・・をやってしまうとか、言ってしまうっていうのは・・例えば具体的にはどんなこと、かな?
相談者:
自分が場違いなこと言ってしまったりとか。
ドリアン助川:
うん
相談者:
人に・・人のことを、悪く言ってしまったりとか。
ドリアン助川:
うん
相談者:
・・思ってないのに・・「自分もそうなんだ」とか、差別的なこと言っちゃったりとか。
ドリアン助川:
ふうーん
相談者:
あと、そしてなんか、違う行動をして先生に怒られたりとか・・
ドリアン助川:
うーん
相談者:
親とか。
ドリアン助川:
ま、例えば、全員で何かしなきゃいけない時に、
相談者:
はい
ドリアン助川:
違うことやっちゃったりするわけだ。
相談者:
はい
ドリアン助川:
ううーん
相談者:
それが不安になることもあって。
ドリアン助川:
ふうん、学校は、あの、普通の学校に行かれたんですか?
相談者:
あの、通信制高校で、あの、通信制の単位が取れて、なんか、いろんな授業をしてくれるっていうところ・・
ドリアン助川:
あー、通信制の高校ね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
ふんふんふん、はいはい
えー、お友だちはいらっしゃる?
相談者:
います。
ドリアン助川:
うん、どういうお友だち?
相談者:
・・学校の友だち・・
ドリアン助川:
学校の友だち?
相談者:
います、3、4人・・
ドリアン助川:
3、4人?
相談者:
いるけど・・
ドリアン助川:
あの、みんなが・・
相談者:
言ったことがないんだ。
ドリアン助川:
ん?
相談者:
言わないようにしてた。
・・ていうか、そういうのはあるけど、
ドリアン助川:
うん
相談者:
あまり俺、人前で深くそういう話は・・違うこととか、場違いなこととか・・
ドリアン助川:
ふん
相談者:
薄々みんな気づいてたけど・・
ドリアン助川:
うん
相談者:
言わなかった。
ドリアン助川:
言わなかった?・・うん
ま、場違いなこととかね?、人の悪口っていうのはみんな言、言っちゃいますけどね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
うん。友だちとは・・
相談者:
ドリアン先生でよかったです。
ドリアン助川:
うん、あ、友だちとは、どんな、ことして遊ぶの?
相談者:
野球してたりとか、フットサルしたりとか、
ドリアン助川:
うん
相談者:
部活、高校の時はそれをやってました。
ドリアン助川:
あ、野球とか・・
相談者:
部活、部活でやってました。
ドリアン助川:
ふうん・・そう、野球、フットサル・・でも、その、友だちい、は、今でも友だちなわけでしょ?
相談者:
はい
ドリアン助川:
ということは、人と付き合うってことは出来るんだよね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
ふうん
で、えー、これ・・
相談者:
自分からぐいぐい来ちゃったりとか言葉・・
ドリアン助川:
うん
相談者:
自分中心に言ってしまったりとか、
ドリアン助川:
うん
相談者:
してたから、小学校の時から・・先生に直してもらってたりとか、小学校の・・
ドリアン助川:
うん
相談者:
中学校の先生と高校の先生を&保育園(?)の先生とか来るんです・・
ドリアン助川:
はいはい
えー、ま、それぞれ先生がいる・・
相談者:
&#△%、あ・・
ドリアン助川:
ん?
相談者:
あの、病院の先生とかにも直してもらったりとか。
ドリアン助川:
うん・・そうですか。
それで、えー、ま、いよいよ就職で・・
相談者:
&#△%
ドリアン助川:
もしもし?
相談者:
はい
ドリアン助川:
はい、いよいよ就職で、
相談者:
&#△・・はい
ドリアン助川:
えー、これから働、く、わけなんですけども、
相談者:
はい
ドリアン助川:
実際に、そこで、これまでこう、試しに働いてみたことはありますか?
相談者:
あります、2週間。
ドリアン助川:
2週間働いてみた?どうでした?
相談者:
楽しかったです。
ドリアン助川:
楽しかった?
相談者:
はい
ドリアン助川:
あーの、そこに行くと、まず何やるんですか?
相談者:
野菜の種の蒔き方とかと、水と肥料と、軽石を使った栽培で水耕栽培という・・ものです。
ドリアン助川:
水耕栽培ね?
え、なんの種、蒔いたの?
相談者:
貝割れ大根とか。
ドリアン助川:
うん
相談者:
主に・・
ドリアン助川:
貝割れ大根?
相談者:
&#△%
ドリアン助川:
うんふふん
相談者:
はい
ドリアン助川:
えー、貝割れ大根、水耕栽培ね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
あー、そうですね。その種を蒔いて。
あれ結構、早く育ちますよね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
ん
相談者:
色々、な野菜を、ホントはもっとおっきい野菜も作るって。
ドリアン助川:
うーん
相談者:
と、機械が、開発されて。
ドリアン助川:
はい
相談者:
ダ・・
ドリアン助川:
ふーん
相談者:
ダンボールっていうか。
ドリアン助川:
はい
で、一緒に働く人たちも・・おー、何か、こ・・
相談者:
&#△%
ドリアン助川:
障害があったりするわけですね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
はい・・どんな人たち?
相談者:
なんか・・なんか自分はまだ普通の人間と思われてますけど。
ドリアン助川:
ふん
相談者:
何も言わなきゃ、おかしな人もいます。たぶん重度な・・
ドリアン助川:
ふーん、うん
相談者:
障害・・
ドリアン助川:
それ、みんなで、でも、野菜作ってくんだ?
相談者:
はい
ドリアン助川:
ええ・・え・・
相談者:
元々、特例子会社(*)なんで、親会社があって、親会社が出来ない作業を・・して・・
(*)特例子会社:
民間企業が障害者雇用を目的として設立する会社。
一定規模の企業には所定の割合の障害者雇用が義務づけられているが、その企業が障害者に特別な配慮をした子会社(特例子会社)を設立して厚労省の認可を得れば、その子会社に雇用される障害者数が親会社のものとしてカウントされる。
ドリアン助川:
うーん・・そっか、そっか。
そして、ま、今そこで今、そういう未来が・・目の前にあるわけですけども、
相談者:
うん
ドリアン助川:
えー、もう一回、教えてください。今のあなたの不安はなんですか?
相談者:
あ、あの・・違うことを言っちゃったりとか・・
ドリアン助川:
うん
相談者:
心がいつも、不安になるんです、泣いちゃったりとか。
ドリアン助川:
あーあ
相談者:
親に、お、お「俺は就職したくないんだ」とか言っちゃったりとか。
ドリアン助川:
うーん、えっと・・
相談者:
思ってないのに・・
ドリアン助川:
「就職したくないんだ」と親に言っちゃう、ていうのはでも・・就職したくない・・
相談者:
不安で。
ドリアン助川:
気持ちもあるから?
相談者:
不、不安で。
ドリアン助川:
不安で?
相談者:
不安で・・言ってしまったりするんです。
ドリアン助川:
うん
でもホントは就職したいんでしょ?
相談者:
はい
ドリアン助川:
うん
相談者:
&#△%
ドリアン助川:
だけど・・不安があるわけね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
うん、うん
相談者:
小学校の時から「わたしは働けない」って言われてたから。
ドリアン助川:
うん・・そういう風にずっと言われて来たから?
相談者:
はい
ドリアン助川:
あの、自分には無理じゃない・・
相談者:
就職決まった時は・・嬉しかったです、当初。
ドリアン助川:
そうだよねえ?・・
相談者:
はい
ドリアン助川:
それは嬉しいよお。
認めてくれたってことも嬉しいし・・
相談者:
はい
ドリアン助川:
自分の力が発揮出来る場があるっていうことも嬉しいですもんね?
相談者:
・・あはい
ドリアン助川:
うーん
でもその不安が、あるんですね?
で、その不安をどうやったら、ま・・不安消すってのは難しいと思いますけども。
不安を、小さくして行けるか?
相談者:
はい
ドリアン助川:
そういう話ですね?
相談者:
はい
ドリアン助川:
はい、分かりました。今日の先生紹介いたします。
精神科医の高橋龍太郎先生です、よろしくお願いしまあす。
(回答者に交代)
この相談者は本当に必死だな。相談するのもうまく表現できなくてガチガチになっていそう。社会に出るのって怖いよなあ・・・なんたって何があるか分からないし、初めての環境に慣れるのって体力も気力も必要だしね。かなりの勇気を振り絞って電話してるだろうから、今日のところはひとまず休んで、やすみの日に会社に行って通うのに慣れてみるとか、先生や医者に話を聞いてもらうとかして、ゆっくり心構えをしていけばいいと思うな。私の通うA型事業所にもいろんな仲間がいるし、きっと時間がかかってもなじめると思います。割といい子だし。
発達障害のかたの肉声と、精神科医の回答。
なかなか耳にすることのできない会話です。
発達障害の人にはちょっと悪ぶるのが好きな人が多いだとか、勉強になりました。
相談者も大変ですが、周囲の者には辛抱強いサポートが求められますね。
一生懸命に話されているのがよく分かりました。周りのことや、自分自身のこともよくわかり、まだ18歳なのに、いろいろなことを経験してきたのだなと思いました。親御さんが、保健師をされていたので、医学知識があり小さいときから寄り添ってここまで彼を育ててこられたのだなぁと思いました。不安は、あると思いますが、せっかくの職場で、少しずつなれて働いて欲しいなぁと思います。
NHKの特集などで発達障害のことは少し知ったつもりでいました。
相談者本人がこんなに病気の事を理解して、苦しみ成長してきたことが良くわかり、聞いていて涙がこぼれました。
周囲の専門的なフォローと、人間的な優しさに包まれて、病気と付き合いながらここまでこられたことは本当に良かったと思います。
私も、肉声を聞くことが出来て良かったと思います。一生懸命に話してくれる人の話しは、私も丁寧に聞きたいと思います。
病気に立ち向かう ひたむきな姿勢に こころ打たれました。
本当に、まだ18歳なのに “父が” “母が” “わたしは” など、言葉遣いがきちんとしているのに驚きました。
環境が変わった場所で一歩を踏み出すのは不安だらけ・・・ですが少しずつ少しずつ慣れて行って、働く喜びを感じて欲しいです。
ドリアン先生で良かったです。
ウルベ都さんでなくて本当に良かった。
社会には様々な人間がいますし、
バリアフリーな世の中に向かうのですから、なるようになる、なんて気持ちでゆるゆるといけるといいですね