無い袖は振れない。娘婿に貸した床屋の開業資金を返してもらうには?
2014年9月10日 水曜日
相談者: 男72歳 妻66歳 長女43歳 娘婿46歳 孫2人(中学生の女の子と高校生の男の子)
パーソナリティ: 今井 通子
回答者: 坂井眞(弁護士)
相談者:
娘婿に貸したお金のうち、342万を返してもらえない。
どうしたら、返してもらえるか。
貸した理由は、床屋の開業資金。
元々、娘婿の家は、代々、家族経営の床屋さんで、娘婿もそこで働いていて、娘がそこに嫁いだ。
娘婿は実の両親と折り合いが悪い。
娘婿の独立開業資金として、360万を貸した。
借用証も作成して、双方が捺印している。
条件は、無利子、無担保、返済は毎月1万円。
その後、娘婿は開店したものの、うまくいかずに、4、5年でつぶれた。
その後、職を転々としている。
実家の床屋も、ごく最近になって店を閉めた。
今井通子:
返して欲しいと?
相談者:
そう。
今井通子:
むこうのご両親が店を閉めるとき、息子に譲るってことは、折り合いが悪くて、できなかったのかしら?
相談者:
そう。
それができたら苦労しないんだけど。
今井通子:
娘婿さんと話し合いはしてる?
相談者:
はい。
「働いて返す」
と言うだけで。
今井通子:
働いたらっしゃるのね。
相談者:
派遣で・・、食べる分だけ。
娘も働いている。
今井通子:
どうしたら、返してもらえるかという相談ですね、
相談者:
借りたもんは返すのが当然じゃないかと。
今井通子:
うーん、分かりました。
(回答者に交代)
坂井眞:
新しいお店を出すからって、協力してお金を貸したら・・
残念な結果ですよねー。
10年前いうことは、あなたが60歳のときに360万貸して、月1万円返すんだったら、返し終わるのは、あなたが90歳のとき。
それも元本だけ。
そういう契約だったという理解でいいですか?
相談者:
そうです。
坂井眞:
一応、借用書は書いているんだけど、娘婿のために一肌脱ぐじゃないけど、出世払いでいいみたいな気持ちもあったんじゃないですか?
相談者:
あったのかなー。
坂井眞:
利息もないし、当時の本音を思い出してもらいたくて聞いてるんだけど。
相談者:
退職金があって、すぐに使う予定もないし、妻と相談して、気軽に貸したっていうのが本音。
坂井眞:
あなたが言うように、貸したものは返さないといけないというのは、まったくそのとおりなんだけど、担保を取らないで貸した場合、返ってこない場合があるんですよ、貸し倒れといって。
お金を貸すっていう行為はリスクを伴う行為で、だから皆、気軽に貸さない。
あなたの行為はそういう行為だということです。
連帯保証人も付けていないので、本人に請求するしかないんですが、娘婿さんに財産はある?
相談者:
いやー、ない、アパート住まいで・・
坂井眞:
そうすると申し訳ないんだけど・・
これ、訴訟すると勝てるでしょう。
判決に従って払ってもらうか、強制執行で差し押さえるんですが、だけど、元手がないので、回収することは難しいと思う。
法的な方法としては、無いということになりそうなんです。
それで、ちょっと方向を変えてね。
30年で元本だけでいいってことは、貸した当時は一と肌脱ぐみたいな気持ちじゃなかったのかと。
だとしたら、ここでこだわってしまうと、娘さんたちとの関係もおかしくなって、もっと失うものが大きいんじゃないかなと。
ちょっと、ご相談の趣旨と違うんだけど、当時を思い出したらいかかですか?、ということが一点なんです。
もう一つは、娘さん夫婦は、床屋さんはうまくいかなかったけど、遊んでいるわけじゃなく、一生懸命頑張っているわけですよね。
なまけて返さないんじゃなく、返せないんですよね?
収入はどれくらいか聞きました?
相談者:
旦那の方は残業入れて12万くらい。
娘が6万くらい。
坂井眞:
合わせて18万でしょ。
それで、中学生と、高校生とお子さんがいるわけですから、ゆとりはないですよね。
相談者:
ないですね。
坂井眞:
なので、訴訟して、娘さんたちとの関係を壊すよりは、なんで貸したんだろう?、と考えてみて、信用して貸したんであれば、うまくいかなかったんだ、と思えるのであれば、どうせ30年かけて返してもらおうとしてたわけじゃないですか。
待ってやることも考えられるんじゃないんでしょうか。
相談者:
はい、わかりました。
今井通子:
払わなくていい、なんてことは言わなくていいから、相手にプレッシャーをかけつつ、世話になったときのチップっていうか、祝儀っていうか、それを自分の中で計算して減らしていくっていう方法もあると思います。
(内容ここまで)
相手が不誠実で払わないんだったら、それこそ弁護士案件で、いくらでも追い込む手はありそうですが、無い袖は振れませんよね。
相談者、坂井さんに、貸し手責任をやんわりと諭されてました。
他人(ヒト)に金を貸すときはあげたものと思え、とは言いますが。
娘婿が失敗しなければ、気前のいい父として気分良く余生が送れてたものをね。
終始、相談者の物分りの良さは、自分のカッコ悪さを自覚してるからでしょう。
貸さなければ、開業できなかったわけで、貸したことで、むしろ悪い結果になってしまったわけです。
失った360万を自分の中で、どう意味づけるかですが、72歳でこの経験はつらいです。
そしてまた、そこに甘える娘婿。
いや、大変なのは分かりますけどね。
善人どうしでも、トラブルは起きるということです。