34歳の息子を否定的に見続けてきた母親

(再びパーソナリティ)

加藤諦三:
あのお、一つねえ、

相談者:
はい

加藤諦三:
アメリカでの調査を言いますとね、

相談者:
はい

加藤諦三:
先生がね、

相談者:
はい

加藤諦三:
新しい先生が、小学校ね、

相談者:
はい

加藤諦三:
中学校。
あの、変わるときにですね、新しい先生に。
前の先生が名簿にね、

相談者:
はい

加藤諦三:
ぽっぽっぽと、名前を、いくつか付けてね、

相談者:
はい

加藤諦三:
この子たち、すごく素晴らしい子、子たちなんですよ、っていう、非常に、いいイメージを言った。

相談者:
はい

加藤諦三:
すと、新しい先生も、そのイメージで

相談者:
あ、

加藤諦三:
その子を見るわけです。

相談者:
はい

加藤諦三:
そうすると、その子伸びてんですよ。

相談者:
ふん、ふん

加藤諦三:
先生が、

相談者:
はい

加藤諦三:
その子をどう見るかっていうイメージが、

相談者:
はい

加藤諦三:
いかに、生徒の成長に、影響するかっていう研究はたくさんあるんです。

相談者:
はい

加藤諦三:
ですからあ、

相談者:
はい

加藤諦三:
あなたが否定的に見たらね、

相談者:
はい

加藤諦三:
母親からこれっだけ否定的に見られたらね、

相談者:
はい

加藤諦三:
よく34まで、来られましたよ。

相談者:
・・

加藤諦三:
ここまで否定的に見られたら、

相談者:
はい

加藤諦三:
34までまともに、もう、来られないです。

相談者:
んん・・

加藤諦三:
だから、反省っていうのはね、あなたはねえ、

相談者:
はい

加藤諦三:
なんでわたしはこんなに不満なんだろう?っていうことを考えること。

相談者:
はい

加藤諦三:
だから、やっぱりね、あなたね、自分が自分に不満だっていうところを、認めないとお、

相談者:
はい

加藤諦三:
始まらないです。

相談者:
うん、うん

加藤諦三:
子どものためで、に、何を変えるか?っていうような質問で言えば、

相談者:
はい

加藤諦三:
簡単です。

相談者:
はい

加藤諦三:
自分が自分に満足する。

相談者:
はい

加藤諦三:
そうすれば、ガラッと全部変わります。

相談者:
うーん・・

加藤諦三:
よろしいでしょうか?

相談者:
はい

加藤諦三:
はい、どうも失礼します。

相談者:
ありがとうございました。
失礼いたします。

加藤諦三:
相手を見るイメージで相手は変わります。

(内容ここでまで)

息子のことをダイアモンドとまで持ち上げられて、癒(いや)される相談者。

ちょっと涙ぐんでたね。

まさか、その数分後に奈落に突き落とされるとは思いもしなかったろう。(笑)

加藤 「母親からこれっだけ否定的に見られたらね、34までまともに、もう、来られないです。」

結局は、両氏とも、おんなじことを言ってるんだけどさ。

 

会社とかから無断欠勤の問い合わせが来る。
母親はビックリして頭下げまくる。

息子を否定的に見ちゃいかん、て言われったってねえ・・

こういう相談になるわな、フツー。

 

まあだけど、もっと小さい頃からとか、心当たりがあるんじゃないですか?、ということなんだよ。

加藤先生、前半の問答で、たぶん、絶望的な気持ちになったんだと思うよ、これ。

この母親、自分の息子なのに、自分が何していいか分んなくなってるわけだけど、その根っこは何かっていうと、息子に関心が無いんだな。

しかも、そのことに、この母親自身が気づいていない。
それはそうだ。
一応はこんなに心配してんだからね。

この母親は、息子が無断欠勤で会社を辞めた回数はしっかりと覚えている。

だけど、
息子が帰国してから通った教会の名前を、たぶん言うことが出来ない。

大原さん、そこを、なんとか気づかせようとしてたんだけど、どうだか。
「わたしは息子さんにこんなに興味があるんだけど、あなたはどうなの?」ってね。

褒めて育てなさい、ってよく言われることだけど、ある種の母親にとっては、こんなに難しいことだということ。

立派な親になろうとすればするほど、してはいけないことに目が行く。
叱る。

子どもに関心の無い親は褒めることが出来ない。
子どももバカじゃないから、お世辞や煽(おだ)ては分る。

100点取ったことを褒めることはどんな親でも出来るが、
靴の紐が結べたことを一緒に喜ぶことは、その子に関心がないとできない。
(加藤諦三)

 

「ねえ、ねえ、これって、英語で何て言うの?」
「へー」

こんな会話すら、息子としたこと無いんだな、この母親。

 

回避性パーソナリティ障害
APD(Avoidant Personality Disorder)

今日の相談者に問題があったとしても、いくらなんでも、34歳の息子の行動は何だ?
どうして基本的なことが出来ない?
母親がすべての原因か?

こう感じる向きも多いかと思う。

この母親が語る34歳の息子の行動を聞いてて頭に浮かんだのが、これ。
回避性パーソナリティ障害、APD。

期待に応えられない罪悪感。
否定的な評価に対する過敏さ、恐怖。

こういうのは、誰にでも多かれ少なかれあることだけど、それが極端。

発表会や試験とか、当人にとって掛け替えの無い、重要と考えられる局面でも、その場から逃げてしまい、社会生活に問題が生じてしまう。

軽い症状だと、
前もって、「この日休ませてください」、と言えは済むことなのに、その一言が言い出せず、結局、当日に、仮病とかを使って休んで、周りに無用な迷惑を掛けてしまう。

重症になると、試験前日に学校に火つけるとか、配達員が年賀状捨てちゃうとか。

で、絶えず自分を責める。
34歳の息子の自殺未遂の原因もこれ。

その基本は過剰な自意識。
周りはそんな期待なんかしていないんだけどね。

小さい頃は誰でも巨大なナルシズムを抱えている。
関心は他者ではなく自分。

これが成長に合わせて適切に満たされていくからこそ、他者へと関心が移り、社会性が備わってくる。

この34歳の息子は満たされることなく、歳だけとってしまった。

 

教会に通って元気になったというのが象徴的で、ここはある意味、現実世界から切り離された場所なわけ。

多少、教会にもよるけど、そうしようと思えば、自分が誰であるかすら明かさずに居ることを許してくれる。

いつ来てもいいし、来なくても非難する人は誰もいない。

求めよ、さらば与えられん、だ。

教師のアドバイスは、たとえ個人的にであっても、教義に基づく一般論でしかないのだが、世俗的・具体的でないことが、却って34歳の息子にとっては心地良かったはず。

 

APD、回避性パーソナリティ障害の原因までは、よく分かっていない。
いくつかの因子の複合的な作用とされる。
その中には先天的なものもあるのかもしれない。

でも、

APDと診断された人の多くが、幼い頃、若い頃に、長期にわたって親からの非難や排除を受けつづけた辛い経験をもっている
<Wikipedia>

まさに今日の相談者と符合する。

 

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