妹の贈与は相続に考慮されないの?真っ当な主張をくじいた番組の罪

(再びパーソナリティ)

今井通子:
はい
お分かりいただけましたか?

相談者:
はい、分かりました。

今井通子:
じゃあ、あのお・・遺言書が、本当に、有効なのかどうか?とか・・

相談者:
はい

今井通子:
うん
あと、贈与の・・えー、日にち?、贈与を書かれた日にちが・・

相談者:
日、はい

今井通子:
1年ん・・より、前だったかどうか?だとか。

相談者:
うん

今井通子:
そういうことも含めて、

相談者:
はい、そうですね。

今井通子:
はい

相談者:
はい、分かりました。

今井通子:
と思います。

相談者:
ありがとうございました。

今井通子:
はあい、どうもお・・

(内容ここまで)

坂井弁護士のアドバイスが理解に苦しむ。

一応とってつけたみたいに法律相談をアドバイスしているものの、基本的な部分で相談者を否定してしまって、争う意欲すらくじいてしまった。

 

何のことかと言うと、母親から妹に対する1,500万円の贈与の件。

坂井眞:

亡くなられる前1年にした贈与っていうのは、
相続財産の中に入れて計算できるという規定があるんです。
そうすっと、(妹への贈与は)1年以上前になっちゃうから、遺留分計算をする時の、基礎には入れられなくなっちゃう。

遺留分?
ピントが外れている。

 

相談者 「遺言書に3分の1がわたしで、妹が3分の2って」

相談者の取り分が三分の一ということは、遺留分なんて1ミリも侵害していない。

今日の相談では遺留分なんて全く関係のない話。

坂井弁護士が聞き違えたのかと思いきや、
坂井眞 「わたし(相談者)が3分の1で妹が3分の2なんだと」

しっかり確認までしている。

 

女は贈与による相続の不公平を訴えているの。

相談者

そしたらなんか・・すごく・・あれですね?、贈与ってすごいことですね・・んん・・

それをさえぎる坂井眞。

坂井眞 「ちょっと、聞いていただきたいんだけど」

てっきり、贈与の遺産への持ち戻しをアドバイスするのかと思いきや、

坂井眞

実際のその、いつか?とかいうことが関わって来るのでね、
一度、法律相談に行かれてもいいと思いますよ。

だから、いつか?なんて関わって来ないって。
「聞いていただきたい」のは相談者こそ言いたいセリフだ。

 

被相続人が生前に行った相続人への贈与は特別受益と呼ばれて、遺産に算入(持ち戻しと言う)することが民法に明記されている。

妹が貰った1,500万が特別受益であることは争う余地がない。

ありがちなのは贈与の事実の有無で争う場合だが、相談者が確認した残高60万円の通帳に記録があれば、妹は認めざるを得ない。

もっとも妹は、持ち戻しの規定なんて知る由もなく、もう終わったことだとタカをくくっている。

どっこい、持ち戻しには遺留分のような期限はなく、いつの贈与でも持ち戻しの対象となる。

母親の遺言に従ったとしても、相談者には、贈与1,500万円のうちの三分の一である500万円の権利が相続時に発生するわけだ。

特別受益の持戻しは現存する遺産が不足していると机上の空論(*)になってしまうが、今日のケースではその心配はいらない。
不動産の売却代金3千万円という原資があるからだ。

(*)特別受益の持戻しは現存する遺産が不足していると机上の空論:
例えば仮に、現存する遺産がゼロだった場合、贈与を持ち戻して遺産額としても、実際に分配するものが何もない。

 

500万円。
いくら民法に書いてあっても相談者が主張しなければ失うことになる。

もちろん、坂井弁護士は、あくまで遺留分の算出の際に、一年過ぎた贈与分は算入できないと言ったに過ぎないのだが、まさか自分にまったく当てはまらない話をしているなどと相談者が思うわけがない。

相談者の頭には、1年以上経ってしまった贈与は、もうどうすることもできないという絶望感だけが強く残ってしまった。
だからこそ番組は罪深い。

 

し方がないから、アタシが相談者が受け取るべき金額を示しておこう。

この金額は不動産が換金され、妹が贈与の事実を認めている今、揉めようのない金額だ。

まず不動産の売却代金のうち、四分の一の750万円は相談者の持ち分を換金しただけで母親の相続とは関係ない。

母の現有遺産は不動産の売却代金の半分1,500万円と預金残高60万円を合わせた1,560万円。

これに、妹の贈与1,500万円を持ち戻すと、母の遺産総額は3,060万円とみなすことができる。
その三分の一は、1,020万円。

これに元々の持ち分750万円を足すと、1,770万円。
これが相談者の取り分となる。

妹の取り分は残りの1,290万円。

たぶん妹は、不動産の共有持ち分すら無視して、3千万を母の遺言に従って分けるつもりだろう。
つまり、妹が2千万円で、相談者が1千万円。

相談者の立場からすれば、出るとこにでればいいだけなんだけど、ちょっといいことを教えてあげよう。

上手く使えば、妹を骨抜きにし、弁護士に依頼する必要すらないかもしれない。

妹を骨抜きにする材料。
それは、妹の脱税だ。

 

妹が2年半前に受け取った贈与1,500万。
これ、断言していいけど、無申告。

本来ならいくらの納税が必要だったと思う?

驚くなかれ、410万円。
もちろんこれは、贈与があった翌年の3月14日までに申告した場合の額。

今から無申告が発覚した場合は、これだけでは済まない。
色々追加されることになる。

まず無申告加算税が80万円

これに延滞税が110万円(仮に今から半年後に納税したとして)

納税額は、しめて600万円。
もし、意図的、悪質だとされれば、さらに重加算税がプラスされて770万円ぐらいになる。

心配しなくても、相談者の遺産分配金には1円も影響しない。
妹は自分の取り分から納税しないといけないから。

2千万円を手にしたとして、今でさえ納税した後の残りは1,230万円。
さらに納税が一日遅れるごとに延滞税は1,100円づつ加算されていく。

なんのことはない。
相談者が主張する特別受益の持ち戻しを受け入れた場合よりも妹の手取りは少なくなってしまう。
しかも、泣く子も黙る国税からの追求がもれなくついてくる。

もし妹がごねるようだったら、この現在進行形の違法行為をお姉ちゃんとして正してあげよう。
妹がよっぽどバカでもない限り、大人しくなるハズ。

ただ、アンタがいくらお目溢し(おめこぼし)をしても、税務署自らが感づけばどうしようもないんだけど。

 

今日のケースでは、妹と母親が、誠実に、というより、せめて普通に振る舞っていれば、相談者の性格からして揉めることはなかった。

父親の逝去から半年後の、ほんの一ヶ月の間に、姉に内緒で母親の現金資産の大半を自分に移し、遺言書を作成。
ある意味、とても分かりやすい行動だ。

預貯金は簡単に移動できても、共有持ち分になっていた不動産は遺言書にするしかなかったわけだ。

まともな母親なら、自分亡き後、二人の娘の仲を決定的に破壊するようなことはしない。
贈与も遺言も、判断力の低下した母親を妹がそそのかしたと考えるのが普通。

余談になるが、坂井弁護士が言っていた遺留分の根拠となる遺産に算入する贈与の期間は、他の相続人の分配を減らす目的が明らかな贈与の場合、一年以内という制約が外される。

他の相続人の分配を減らす目的とは、まさに今回、妹と母親がやったことに他ならない。

この、相談者を利する重要な情報をなぜだか坂井弁護士は言わない。
あくまで贈与の期間へのこだわりを曲げず、ただでさえおかしな回答をもっとおかしなものにしている。

 

無理を通せば道理が引っ込む。
争いの発端は常に無理を通そうとする側にある。

なのだけど、相続の現場では、なぜか道理を唱えている側が悪く言われてしまうことがよくある。

アタシも調停で経験した。

良くて喧嘩両成敗。
悪ければ、ごねる等、etc.

坂井弁護士の素っ頓狂なアドバイスも、そうした先入観から来ているのかもしれん。

 

妹の贈与は相続に考慮されないの?真っ当な主張をくじいた番組の罪」への12件のフィードバック

  1. 遺産相続の相談を聞くたびに時々思う。
    なんでこんな呆けた婆さんがそんなに金が欲しいのか。

  2. 相談だから本当のところはよくわかんやいけど
    長女なら結婚した時に土地もらって家建てたとかあるかもよ(笑)

  3. 私が理解力がないだけかもしれませんが、相談者の説明(時系列など)が下手だなーと思いました。
     こういう相続の問題って、何から起こるのかって、やっぱり「不平等感」かな、って思います。
    相続(お金のこと)によって、親の愛情の差を見せつけられてしまうところがあるのだと思います。
     でも、あとで相続できょうだいが揉めないように、亡くなる前にちゃんとしておくのが、最後に示せる親の愛情だと思うのですが、なかなかそれができないのでしょうね。

  4. お母様の遺言書って、何がどう書いてあったんでしょうね。
    妹への贈与1500万って、妹が自分で白状した感じではなさげなので
    その件についても、なんか書いてあるものが見つかったんでしょうけど…

  5. 相談者の説明が下手過ぎ、話口調が聞きづら過ぎで
    内容が頭に入らず
    最近は相談内容を見るだけで
    管理人さんがコメント今日はしそうだなって思っちゃう
    ブルーのやっぱりマークがついてた
    管理人さん相続問題得意だから黙ってらんない感じ

  6. 年齢的に仕方ないけど、感情的になって、動機もひどいし、このことで寿命縮めたのではないでしょうか。
    感情が先立って説明がうまくいかないのは、仕方ないと思いますよ。
    怒りがすごいんでしょう。
    「贈与」という言葉を吐く時の怒りがすごい。
    今井先生は優しいから甘えてますよね。
    しっかり者だけど人がいい長女と、ちゃっかり者でふてぶてしい次女が思い浮かびました。

  7. 人生相談ほんと勉強になります。私も姉妹なので、こうはなるまいと思っても、もしかしたら避けられないのかも?と、腹をくくったりもします。
    ラジオの回答は、ほんとうに誰がきいても正しいからきいてて気持ちがいいけど、それに沿うよう生きたらどこかで何かしら不具合が起こるような気もしてきます。
    高齢になるにしたがって、平等とか、誠意とか、無意味になるのかなぁ、って。
    だから、ラジオの回答より、管理人さんのコメントの方が勉強になります。

    1. ↑まるで管理人さんのコメントがアレみたいな書き方になってるような気もしますが、「相談者の気持ちを汲んだ上でのコメントが深いなぁ」みたいなことが言いたかったです。

  8. こういう法律相談をテレ人にするのって、弁護士に相談するより、心理的なハードルが低いのかしら?
    こんなとこで息巻いてないで、すぐ弁護士のとこ行けばいいのになぁって思うのですが。

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