加藤諦三:
変えられない。
ですから・・
大竹まこと:
その関係において、大元(おおもと)は旦那さまにある。
だけども、この旦那さまを否定しちゃうと、離婚して、生活ができなくなる。
それは壊したくない。
だから・・
加藤諦三:
一番怖いんです、やっぱりそこが。
大竹まこと:
そこが怖い。
本来ならば、こう・・せっかく結婚したんだけど・・わたしのこの立場は、上手くいってない。
原因は周りの子どもでもないし、隣りでもない。
旦那さまと、わたしとの関係にあったんだ。
それに、まず離婚する前に、そこにまず気づくということが、大事。
加藤諦三:
そこに気がつかない限り、解決は絶・・対につかないわけです。
大竹まこと:
逆なことを、(追う?覆う?)立場から見ると、例えば、会社の社員であった夫、これが会社ではとてもいい人、易しい人、評判をとってる。
ところが、この人が家(うち)に帰って来ると、家庭内で意張り散らして、暴力を振るったり、子どもにDVをしたりする。
これは、どこに原因があるわけですか?
加藤諦三:
もうそのドメスティックバイオレンスというのは、その、外で、いい顔・・だから、外で子羊、家でオオカミっていうのは最も幼稚な人間なんですよ。
外でもっていい顔をして、外の人に嫌われないようにする。
だけども、本当の自分じゃないですから。
嫌われないように、好かれるために、受け入れられるために自分でない自分を演じてるわけですよ。
大竹まこと:
みんなに、気を遣って・・
「あの人いい人だね」って言われるのは、それは自分の本質じゃないんだ?
加藤諦三:
本質じゃない。仮面を被ってるわけです。で、物凄い、自分の心に不満が・・傷ついてますから。
その傷を癒すのが、家に帰って来て、これにはもう、徹・・底的に・・もう、暴言は・・肉体的にも心理的にも暴言を吐くわけ。
ですから、外で子羊、家でオオカミなんです。
大竹まこと:
その場合は、何を置き換えてるっていうことになりますか?
加藤諦三:
だから本当は・・それは外に対する、上司に対して面白くないわけですよ。
大竹まこと:
もう端(はな)から・・
加藤諦三:
端から・・
大竹まこと:
上司が・・
加藤諦三:
上司が。
だけど上司に対して、
「分かりました!」、「はい!」って言って、
「部長の言う通りです」って言って・・
今度、家に帰って来て・・安全な場所・・
大竹まこと:
なるほど。
加藤諦三:
だから、この奥さんがね?、本気で離婚する決意を考えた時、夫の態度はガラっと変わります。
大竹まこと:
なるほど。
加藤諦三:
「え?、ホント、これ、あの人?」ってぐらい変わります。
大竹まこと:
なるほど。
加藤諦三:
それまで、それの前のだって、会社では別人なんですから。
それで家ではオオカミなんですから。
だけど本当に、これは離婚になると思ったら、今度は会社を辞めるとおんなじぐらいに重大なことですよね?
大竹まこと:
本人にとっては
加藤諦三:
ええ
大竹まこと:
はい
加藤諦三:
そいで・・
大竹まこと:
そこは、今度は守んなくちゃいけなくなるわけですね?
加藤諦三:
ええ
大竹まこと:
自分にとって一番、大切な物に変わるわけですから。
加藤諦三:
すると、ガラっと態度変わる。
大竹まこと:
はあ。じゃ、本来ならば、上司とか世間とかでいい顔してるんだけど、本当はそこんところが気に入らないと。うん
加藤諦三:
本当は嫌い。
大竹まこと:
嫌い(苦笑)、上司も嫌い。
加藤諦三:
部下は嫌い。
大竹まこと:
部下は嫌い。
加藤諦三:
上司は嫌い。
みんな嫌い。
大竹まこと:
それを偽っている分、
加藤諦三:
で、本当にいい顔して、ニコニコ、ニコニコしている。
大竹まこと:
だからその、裏の本当の自分の、面(つら)は、あの・・
加藤諦三:
敵意ですよ。
大竹まこと:
敵意。上司に向けられないから。
加藤諦三:
上司に従順。その裏の敵意が、今度は・・
大竹まこと:
家庭の中で。
加藤諦三:
攻撃性は、安全なところに向けられるんです。
だから、攻撃性は、安全なところ、っていうのは、今はほら、家庭ですから・・別人になる。
ところがこの家庭の奥さんの方が、本気で離婚を決意した時に、これは、安全な場所じゃなくなっちゃいますから。
大竹まこと:
なるほど、分かりました。
えーっと、じゃ、伺いますが、本当に強い人が、仮定ですけども、いたとします。
それは、本当に強い人は攻撃性を、持たないってことになりますね?
加藤諦三:
いや、攻撃性は持たないっていうより、本当の攻撃性を常に意識してるってことなんです。
「俺は今ね?、ニコニコ上司にいい顔してるけれども、ホントは上司、嫌いなんだ」とか。
「あれえ?・・夫を嫌いなんだぁ」とか、本当の感情を意識する人なんですよ。それが強い人なんです。
大竹まこと:
それじゃその・・じゃ、ヘコヘコをしてて、外でいい顔をしてる人たちは、そこの自覚が足りない。
加藤諦三:
全くないです。
大竹まこと:
ない?
加藤諦三:
ない
大竹まこと:
あれば、これは・・
加藤諦三:
◆#$%□&▽
大竹まこと:
身過ぎ世過ぎ(*)のためだと。
(*)身過ぎ世過ぎ: 生活、生計
本当の俺はこうじゃないけども、身過ぎ世過ぎで女房子ども食わせるんだから、強くあらねば。
で、生きて行こうってすれば、家(うち)に帰って来ても、その、ドメスティックバイオレンスみたいなことはしない?
加藤諦三:
しない。
大竹まこと:
本当に強いって、どういう風な、ハハハ(苦笑)・・
加藤諦三:
本当に強いっていう人は、自分の弱さを知ってる人なんですよ。
大竹まこと:
自分の弱さを・・
加藤諦三:
知っている人。
大竹まこと:
どこと、どこが俺にはウィークポイントがあると。
加藤諦三:
あるっていう、つまり人間は神様じゃないですから、必ず弱点も悪魔の部分が持ってるわけです。
だから、自分が悪魔の面を持っているということを知っている人が一番、神に近い人なんですよ。
「わたしは神だ」って言った時は、これはもう正常な範囲を逸脱しちゃうんです。