夫が遺産をすべて長男にと言うが、嫁から追い出されないか
(回答者に交代)
高中正彦:
遺言書はあなたが保管しているの?
相談者:
いえいえ
高中正彦:
ご主人は何をやられてた?
相談者:
個人商店に勤めていました。
サラリーマン。
高中正彦:
息子さんもサラリーマン?
相談者:
いえ、教職におります。
高中正彦:
あー、公務員なのね。
息子さんの持ち家は、援助をなさった?
相談者:
お祝い金は渡しましたけど、援助というものではありません。
高中正彦:
ご主人、息子に全部託すって、なんでそんなことを言い出したの?
相談者:
病気で弱気になったんだと思います。
高中正彦:
弱気になったら、(任せるのは)あなたじゃないの?
年が8っつも違いますよ。
相談者:
私も腰を痛めて、十分に動けないので。
私が夫の看病できないんだったら、息子に頼まないといけないでしょ。
高中正彦:
息子さんが介護を嫌がると思ってらっしゃる?
相談者:
嫁の態度を見ていたら、今一、親身になれないというか、そういう気がします。
そうなってみないと分かりませんが。
高中正彦:
息子さんが出てけ、と?
お嫁さんが、あなたを追い出すと思ってる?
どっち?
相談者:
嫁がそう息子に言わせるんじゃないかと。
高中正彦:
息子さんは逆らえない?
相談者:
見てると、頼りない息子ですね。
高中正彦:
持ち家もあるわけですよ。
息子(相談者の孫)も2人いて、・・
相談者:
男の子がいるから、持ち家と、もう一つ家が欲しいんです。
高中正彦:
そんな、欲深いの。
相談者:
うちに嫁にきたときから見えてました。
高中正彦:
根源は、嫁の知りに叱れた頼りない息子につきるのかな。
相談者:
(笑)そうです。
もー、嫁にくるときから、この子(嫁)でいいのかなーっていう気はしてました。
高中正彦:
どこら辺がダメだった。
相談者:
結納のお品を買うときに、これはこうしてください、これはこうしてください、結納金はいくら以上、全部むこうから・・
高中正彦:
言ってきたの
相談者:
はい。
高中正彦:
それが気に食わないの?
相談者:
気に食わないですねー(笑)
高中正彦:
他には
相談者:
孫が生まれて、その頃は同居してたんですけど、お洗濯のときに、私は手伝ったつもりなんですが、洗濯機から洗濯ものを、嫁が外におりましたから、渡そうとしたんです。そうしたら、
「お手伝いさんじゃないんですから、手を出さないでください!」
って。
高中正彦:
きつくいわれっちゃったんだ。
あなたとしては、息子よ、しっかりしろ、と言いたいわけね。
長女は弟さんのことをどう言ってます?
相談者:
ときどきは、あんたそんなんではーって言ってくれているみたいです。
娘の方が頼りになりますね。
高中正彦:
まず、遺言書を書き直すことは自由なんです。
書き直なおさないよって、言ったらダメなんです。
遺言の取消権は放棄できないっていう規定があって、遺言は何回でも書き直したっていいんです。
ご主人が遺言書に息子さんに全部やるよって言っちゃったら、それ自体しかたないんです。
でも、息子さんに全部やるって言われても、あなたには遺留分っていう最低保証があるんです。
それが全財産の4分の1なんです。
相談者:
半分って聞いていました。
高中正彦:
いや、4分の1なんです。
あなたの法定相続分が2分の1でしょ。
遺留分は、2分の1かける2分の1になっちゃうんです。
だから、最低保証は4分の1なんです。
相談者:
ほー
高中正彦:
土地、建物についても4分の1を戻しなさいって言えるわけです。
先ほど、されちゃうんじゃないかと心配されてたでしょ。
あと、売られちゃうんじゃないかと。
あのね、持分だけ買う人っていないんですよ。
なので、土地、建物を売り払われる可能性は、ゼロではないけど、かなり下がります。
あと、とり壊すことは、あなたの許可がないとできません。
これは心配ご無用。
相談者:
あーそうなんですか。
高中正彦:
私、4分の1持ってるのよって言って、ガーンと鎮座しておくことはできる。安心してください。
権利がゼロになってしまうことはありませんから。
でも、遺留分の交渉は素人では難しいから、そうなったら、法律相談センターで弁護士さんに相談してください。
法律論はそれなんだけど、お父さんとはうまくいってたの?
相談者:
私ですか?
表面は。
高中正彦:
そうでしょう。
なんでも相談できる親族は娘さんだけでしょう。
相談者:
そうですね。
この人と相談したら?
一人で悩んでたらつらいよ、これ。
あと、この年になったらって、失礼だけど、最後に強い奥さんになったら?
でも、息子は頼りになると思うよ。少しは。
相談者:
今のところはお嫁さんが・・
そうなったら、そうしてくれるかもしれませんけど。
高中正彦:
良かったじゃない、お姉ちゃんで。
お姉ちゃんとね、どうするか、愚痴じゃないけど、あなたもがんがん言った方がいいよ、溜めないで。
相談者:
はい、そうします。
どうも、すんません。
失礼します。
(内容ここまで)
結納金をいくら以上って・・
破談になってもおかしくないレベルだと思います。
相談者の夫の立場で考えると、遺産を妻か、長男か、っていうのは、あまり問題じゃないんですけどねー。
だって、妻に渡った遺産は妻が亡くなれば、子どもに渡るので、タイミングの差でしかありません。
むしろ、今は、長女が抵抗していいような問題だと思います。
にしても、なんで相談者の夫が、その、あまり意味を見出せない、そのようなことをするのか?
嫁の存在でしか、説明がつきません。
したかかな嫁のことですから、義理父にとりいってるんじゃないでしょうか。
もちろん、遺産が頭に入った上での行動です。
いくらなんでも、嫁が、相談者の住むところを失うような酷いことをするとも思えませんが、相談者がまじめに恐れているところが考えさせられます。
昔は、同居してたらしいので、ひょっとすると、相談者が追い出しちゃったとか。
で、仕返しを恐れるみたいな。
いずれにしても、仮に、長男の持ち家になってしまうと、とり壊されないにしても、相談者はタダで住まわしてもらっている、という構図になってしまいます。
この構図はだめです。
嫁の態度に現れてきますから。
相談者に持分があれば、高中先生が言うように、勝手なことはできないし、さらに、この嫁と長女との間で、その遺産を分け合うことになるわけですから、嫁は相談者ともうまくやらざるを得ません。