夫のアルコール依存症とDVと、14歳息子の問題行動
(再びパーソナリティ)
ドリアン助川:
あっ
もしもし?
相談者:
はい
ドリアン助川:
今、あのお、マドモアゼル愛先生仰ったように、誰もあなたのことを救いはしないんですよ。
相談者:
うん
ドリアン助川:
だぶん、救うとしたら、あなた自身なんですよ。
相談者:
そうですね。
ドリアン助川:
で、あなたがあなたを助けるしかないんですよ。
相談者:
うーん
マドモアゼル愛:
依存するものがないのよ、ほんとは。
すごい、あなたの依存性から来てるのよね、実はね。
相談者:
うーん
マドモアゼル愛:
常に、目先ばっかり、上手くいけばいいっていう、
相談者:
うーん
マドモアゼル愛:
なんか、そこで真の愛情のかけらもないし、
相談者:
うーん
マドモアゼル愛:
なんか、母さん、命がけで、なんか、こうやって、俺になんか、言ってんだっていうようなものも、出て来ないのよ。
相談者:
うーん
マドモアゼル愛:
それは自分の恐怖と戦ってえ、自分の生き方変える以外から出て来ないと思うよ。
相談者:
はい
マドモアゼル愛:
ついに、そこまで、しかも、追い込まれちゃったのよ。
相談者:
うーん
マドモアゼル愛:
しかし、うーん、では始まらないよ。
相談者:
はい
ドリアン助川:
いずれにしろ、その、決断するのも、戦うのも、誰かがやってくれるわけではないので、
相談者:
はい
ドリアン助川:
あなた自身が今日から、
相談者:
はい
ドリアン助川:
やることだと思います。
相談者:
はい
ドリアン助川:
はい、どうも
相談者:
はい
すいません、ありがとうございます。
ドリアン助川:
失礼します。
相談者:
はい、失礼いたしまあす。
(内容ここまで)
愛 「『うーん』では始まんないよ」
(笑)
やっと言ってくれたか。
通常は、同意しかねるときのリアクションなんだけど、
この人の場合どうやら、「はい」と同じ意味だったらしい。
あと、「よく分んない」意味でも使ってると思われ。
・アルコール依存症のDV男との生活か?
・経済的に不安な母子家庭か?
究極の選択?
いやいやいや、こうして見比べると一目りょう然。
後者しかあり得んだろ、フツー。
と他人は思う。
ただ、そう思えるのは、このどちらの状況にも想像力が働くから。
ある種の人間が怖れるのは、未知の未来と、環境の変化だってことなの。
どう見たって、今がひどい環境ではあるんだけど、慣れって恐ろしい。
現在、暮らせているという事実が、心理的な重しになって、抜け出す意欲が沸いて来ない。
で、10年以上経ったわけだ。
この人、たぶん、次の10年までいくよ。
そのとき、旦那は、アルコールが身体を蝕み、働けなくなくなっている。
息子は社会不適合。
さらに、娘の問題が追加されていよう。
これが、愛さんの言う「不決断」が導く、この人の選択なの。
アルコール依存症と酒乱
相談者、一応区別はしてるみたいだけどね。
両者は別問題。
2つセットのケースは非常に多いんだけど。
酒乱
いわゆる酒癖の悪さ。
泣き上戸やスケベとか、色々。
今日の旦那が飲んだときのDVもそれ。
モノDVなんて言うよね。
威嚇しているわけよ。
酔って変わらない人ってのもいないけど、それが人に迷惑を掛けるレベルになると酒乱と言われる。
一般に、普段は大人しく、飲むと豹変する。
気が小さく、ストレスを溜め込んでいて、酔うとタガが外れるわけだ。
改善の方向としては、まず何より本人の自覚。
普段からストレスの軽減に努め、飲酒以外のストレスの発散に目を向けるとか。
もちろん、飲まない、飲ませないということが最も有効なのは言うまでもない。
だから、夫のDV対策は飲まさなければいいだけの話なんだけど、それが出来れば苦労はしない。
もはや、夫は自分の力では止められなくなっているからだ。
夫がアルコール依存症だというのは、相談者による素人見立てなんだけど、その様子から当たっている可能性が高い。
でも、アルコール依存症に対する正しい知識は相談者も持ち合わせていない模様。
アルコール依存症
薬物依存の一種であり、れっきとした精神疾患。
アルコール自体が合法であること以外は、麻薬や、覚せい剤の依存症と本質は同じ。
飲酒のコントロールが効かず、飲み始めると、飲み続けてしまう。
飲酒を中断すると、禁断症状(不安、恐怖感、頭痛、手の振るえ、妄想など)が出る。
精神だけではなく、アルコールの過剰摂取による内臓疾患も誘発する。
アルコール依存症患者はそれでも飲み続ける。
誰もがそうであるように、最初は時折飲む程度なんだけど、次第に習慣化していき、1回の飲酒量が増えていく。
で、飲まずにはいられなくなる。
これがアルコール依存症の入り口。
アルコール依存症から脱出するためには、何より断酒なのは言うまでもない。
だけど、止められないから依存症なのであって、禅問答になってしまう。
専門の医療機関のサポートが必要になってくるんだけど、まずは本人の自覚が第一。
しかし、これが難しい。
今のところ、この夫にお酒を止(や)めようなんていう考えはないからね。
どん底まで行けばさすがに本人が気づくけど、その前に自覚させるには、家族を始めとする周囲の理解と協力が求められる。
さっき、相談者が決断を迫られている2つの選択肢を挙げたんだけど、実は、もう一つあって、それは、夫のアルコール依存症を治し、家族を再生するという道。
だけど、今日の話の中に、その選択肢は見えてこなかった。
それどころか、相談者こそが夫をアルコール依存症にしている状況が見て取れる。
相談者はイネーブラー(enabler)
アルコール依存症のそばにいる、飲酒を助長する人のことをイネーブラーという。
酒代を渡したりだとか、飲酒が原因で起こすトラブルを解決してあげるような積極的なイネーブラーもいれば、飲むのを止(と)めない、治療を薦めないといった消極的イネーブラーもいる。
当然、イネーブラーの存在は、アルコール依存症から抜け出すことを困難にする。
相談者が息子のことを相談したことは、夫の自覚を促すことにはプラス。
だけど、酔った夫の要求に応じて、息子を座らせるとか言語道断。
アルコール依存症患者が酔っているとき、周囲は相手をしてはいけない。
唯一許される相手のし方は、飲酒を止(と)めることだけど、ものすごい抵抗が予想される。
でも、それをせずに、飲むがままを許している相談者は、間違いなくイネーブラーである。
アルコール依存症とアダルトチルドレン
アダルトチルドレン(AC)とは、機能不全家族(*)に育ったせいで、心理的外傷(トラウマ)を抱え、対人関係を始めとする社会生活に問題を生じている成人の総称。
(*)機能不全家族:
片親であるとか、貧しいとか、そういう外見上のことでは全くない。
常態的な家族間の対立、団欒(だんらん)が無い、暴力、虐待がある、無関心、犯罪行為の容認、規範意識が薄いなど。
しかし実は、アダルトチルドレンの語源は、
Adult Children of Alcoholics(アルコール依存症の親に育てられた大人)なのである。
「いかにこの家が変かっていうことを見事に息子さんが示し出す」
という愛さんの指摘はまったく正しい。
そのうち、10歳の娘も示してくれるようになる。