ATM100万✕4日で銀行から「ご本人ですか?」。愛人から守った500万
(再びパーソナリティ)
ドリアン助川:
も、も、もしもし?
相談者:
はい
ドリアン助川:
あの、戦いを前にして、
相談者:
はい
ドリアン助川:
えー、大変な時だと思いますけども、
相談者:
はい
ドリアン助川:
あのお、生活すべて、24時間全部そっちに持ってかれちゃうと・・またそれもしんどい、ですからね。
相談者:
はい
ドリアン助川:
あの・・どっかで・・一服するようなお時間も作って下さいね?
相談者:
はい、分かりました。
ドリアン助川:
はい
相談者:
ありがとうございますう。
ドリアン助川:
はい・・失礼します。
相談者:
はい、はい、失礼いたします、ごめん下さい。
(内容ここまで)
5日目、ATMの前で歯ぎしりする顔が見ものだった。
男が亡くなれば、愛人なんて遺産に対する一円の権利もない。
むこうだって必死なんだよ。
もうちょっと賢ければ、カネもろとも父親をくれてやるっていうアンタからの提案を大人しく受け入れて、財産をせしめた後でバッくれることも出来た。
協力扶助の義務は妻にしかないんだし、この状態で離婚なんか出来るわけないし。
にしても、どこの銀行だろ?
この手の対応のし方、銀行でマチマチだから。
てか、何気にビックリしたからタイトルに入れたんだけど。
だって、外形上は正常な取り引きでしょ?
たまに、行員の機転によって詐欺被害なんかを防いだことが話題になるけど、それって、窓口での声掛けや、携帯電話をしながらのATM利用とかの、見るからに、っていうケース。
今回の場合はそれとはまったく違う。
銀行のシステムには、勘定系と呼ばれるシステムと、情報系と呼ばれる二つのシステムがある。
勘定系とは銀行の基幹システムで、口座ごとの全取引情報をリアルタイムでデータベースに記録する。
当然、ATMとつながっている。
支店からはアンタッチャブルだ。
これに対して情報系は、勘定系のデータを結合、フィルタリングし、支店のPCから参照出来るようにするシステムで、ATMとはつながっていない。
たとえば銀行から金融商品の営業電話が掛かってきたりするが、これには情報系システムが使われている。
大口の顧客は別にして、大抵は情報系システムからスクリーニングされた顧客にオペレータが掛けているだけだ。
(大口顧客には担当営業がついている)
あるいは、遺産相続などで、まとまったお金が振り込まれた翌日に、いきなり銀行から営業電話が掛かってくるのを経験した人がいるかもしれない。
これはもちろん偶然なんかではない。
だからって、行員が見張っているわけでもない。
予め設定しておいた条件にヒットした口座を、情報系システムが知らせてくれるようになっている。
今日の相談で、銀行から本人確認があったのも、情報系システムがアラートを出したからだ。
どうせ出すんだったら、ATM操作の段階でアラートを出せば、その場で本人確認できるのに、と思うかも知れないが、さっき言ったとおり、ATMと直接つながっていない情報系システムにそこまでの速報性はない。
それにしても、100万円✕4日の出金ぐらいでアラートとは、いささか設定が厳しい気がする。
これじゃ、要本人確認だらけになる。
何を隠そう、実はアタシも、一年ほど前に、この愛人と同じことをした。
父が亡くなって、父の口座からATMで引き出しのがそれ。
残高は数日でゼロになったが、銀行からはなんの音沙汰もなかった。
おそらく、今日の相談の銀行のアラートの条件は、AIとまで行かないにしても、少し細かく設定できるハズだ。
金額はもちろん、名義人の年齢、取り引き履歴・・
そうすると、日頃大した動きのない口座から、92歳がATMで4日連続で100万を引き出した。
確かにアラートを出していい。
結果的にドンピシャだった。
さらに、今日の相談の銀行は、アラートを出した当日に、娘からの口座凍結要請に応じるために、行員が病院まで父親の様体を確認しに行っている。
こんなこと、メガバンじゃ絶対やってくれないでしょ?
顧客保護の意識の高い銀行のおかげで500万は守られた。
だけど、刑事事件化?
ムリだよ。
脅迫して暗証番号聞き出したでも言うの?
通帳と印鑑も持ってるんだよ。
てか、父親の生活基盤は愛人宅にもあって、私物も置いてある。
愛人が日常的にATMから引き出していたと考えるのが普通でしょ?
第一、父親自身が被害届けを出せない。
これで一体なんの罪に問える?
せいぜい、民事で返還請求するぐらい。
それだって、父親の成年後見人か、あるいは亡くなった後の相続人にしか出来ない。