「一番危険なのはあなたです」 54歳の未婚息子から母親を守った成年後見人制度
(再びパーソナリティ)
今井通子:
お分かりいただけましたか?
相談者:
はいはい、
今井通子:
はい、あなたはこういう、過去の事をお、でえ、
相談者:
ええ
今井通子:
あれこれ考えてないでえ、
相談者:
ええ
今井通子:
これからの、自分の事を考えてえ、
相談者:
ええ
今井通子:
もっと、楽しい生活して下さいよ。
相談者:
いや、わたしは、だ、だからね?
今井通子:
うん
相談者:
結局、
今井通子:
うん
相談者:
少しでも、相続税、減らしてねえ、
今井通子:
うん
相談者:
後世に、の、残す事を考えてますからね、
今井通子:
でも、良いじゃないですか?
世の中、国、人に貢献出来て・・
相談者:
・・・
今井通子:
払う人は大変だけれどもお、ちゃんと払って下さってえ、
相談者:
ええ
今井通子:
頑張って頂けるとお、日本の国は、それなりに、安定してもつ訳じゃないですか?
相談者:
そうですねえ。
今井通子:
うん、で、溜飲を下げて下さい。
相談者:
ああ、そうですか。
今井通子:
うん
相談者:
はい、分かりました。
今井通子:
はい
相談者:
どうも、ありがとうございます。
今井通子:
じゃ、はい、失礼しまーす。
相談者:
失礼します・・はい
(内容ここまで)
そない慌てんでも。
と思ったんだけど、この人、吃音症なの。
吃音症: きつおんしょう。言葉がスムーズに出てこない言語障害。いわゆるドモリ。
軽い方だけど。
そら、意思を伝えるのは辛かろう。
特に電話だとね。
いつ発症したかは知らんけど、治しようもない特性とは、もうそろそろ仲良くしても良さそうな年なんだけど、いまだにイラついてる。
医師でもある今井さんが気づかないわけはなく、だからこそリピートしながら一生懸命聞いてあげてるでしょ?
さて、
姉、ないし成年後見人は一体どうするつもりなんだろうねえ。
土地処分して施設費に当てるつもりなのかしら。
施設料月20万ってのはあり得なくもないけど、かなりグレードが高い。
たぶん、施設費の方は母親の年金と保険とで賄える程度。
つまり、母の財産で食ってたのが相談者。
だったら、相談者の慌てっぷりも分かる。
地代が入ってこなくなったんじゃ死活問題だもんね。
でも、姉も相当だよ。
母の預金800万を隠してから後見人を申し立てたんだから。
大迫女史から、「一番危険なあなた」って言われちゃったけど、成年後見人を立てないとこうなっちゃうよ、ってのを見せてくれたのが何を隠そう、この姉だ。
成年後見開始が1年前。
で、土地の賃貸借の解約の申し出が数ヶ月前。
これは、成年後見の開始に伴って、弁護士が再契約をしようとしているだけ。
相談者には知らされてないだけ。
これで地代を息子の生活費に廻さなくなった分、母は本当にハイグレードの施設で暮らせる。
同時に、悠々自適のはずだった男の老後は、母の長寿によって藻屑と消え去る。
めでたし、めでたし
母親の財産はいくら?
地代収入月20万!?
年間240万だ。
地代は運用利回りを目安とするから、低めの1.5%だとして、土地の取引価格は1億6千万。
これに、男が今住んでいる家土地が加わる。
資産家と言っていい。
取引価格の70%の1億1千万で計算しても、掛かる相続税はおよそ1千400万円。
確かに相続税対策を考えてもいい額だ。
だけど、男が言うように贈与で価値を減らしていくというのはいくらなんでも無理。
価値がデカ過ぎて焼け石に水。
効果を出すには数十年の歳月が必要になってくる。
ま、どうせ成年後見人制度に対する理解度と同じくらいなんだろうけどさ。
それか、逝くのを待てずに早く売っぱらって現金化したいだけ。
申請する側にも覚悟が求められる成年後見人制度
成年後見人制度とは、自分が所有する財産は、自分の意思で自由に出来るという基本的な人権を奪う重大な制度。
資本主義の国では他人の財産に手を突っ込む権限は税務署ぐらいにしか与えられていない。
この権限を市井の人間に与えようというんだから、裁判所が慎重になるのは当然だ。
各地裁には専任チームが設置されていて、そこが対応に当たる。
慎重というのは何も後見開始だけではない。
大迫さん言うとおり、後見中止も非常に慎重だ。
一旦、成年後見開始の申し立てをしたら最後、手続きの判断の全てが裁判所のものとなる。
申請者の都合による中止なんかは認められない。
考えてみたら当然だ。
だって、そこに自分の財産を管理できない人がいるという事実を裁判所が知ってしまうからだ。
・希望する成年後見人が選ばれなかったから。
・選任された成年後見人の報酬が高いから。
こんな理由で、開始された成年後見が中止となったり、申し立てそのもののキャンセルが認められることはない。
肉親が成年後見人になれないケース
そもそも上手くいっている家族にとって成年後見人制度なんて無用のものだ。
ボケてきたら、一番近くにいる人が、本人の考えを斟酌しつつ財産を管理し、周りもそれを信頼して任せればいい。
だから制度を利用するのは以下のようなとき。
- 本人が一人暮らしや、家人が出払った日中などに不利な契約を結んだり、悪徳業者に引っかかる恐れがある。
- 遺産分割協議や損害賠償請求、調停や訴訟など、原則本人にしかできない法的手続きが発生した。
- 本人の財産に直接アクセスできる信用ならない人間がいる。
今日のケースは3。
申請書には誰を後見人にするか、希望を書く欄があるんだけど、希望をかなえるためには親族(本人が亡くなったときの相続人)の同意書が必要となる。
今日のケースだと弟の同意書が得られないわけだから、希望の後見人の欄は空白のままで申請したハズだ。
で、裁判所が選任したと。
もちろん有償。
それは本人の財産から支払われる。
家族の仲が悪いと余計な現金が流出するわけだよ。
一旦、後見が開始されると、本人の財産を処分するのはとても面倒になる。
成年後見人とて自由にはできない。
少額は事後報告、金額によっては事前に裁判所にお伺いを立てないといけないからだ。
裁判所は本人に明確なメリットのある出費でなければ認めない。
実はアタシも今年、母の成年後見人に就いた。
もちろん家族の仲が良好だから就任出来たわけ。
成年後見人が必要になった理由は上記の2。
正確に言うとアタシのは保佐人と呼ぶ。
成年後見には、後見、保佐、補助の3種類があって、症状によって段々と後見人の権限と責任が小さくなっていく。
私には母が行った契約等の法律行為を、後からでも取り消す権限が国から与えられている。
一方で、日常の買い物なんかは母が自由に行える。
だから今日は、成年後見人の交代について、大迫女史の考えを聞きたかったんだけどあまりに初歩的過ぎた。