回答者も認めたその実力。弁護士がサジ投げた公正証書遺言をひっくり返した女

(再びパーソナリティ)

今井通子:
はい、お分かりいただけましたか?

相談者:
はい

今井通子:
はい

相談者:
ホントによく分かりました、ありがとうございます。はい

今井通子:
それじゃ・・

相談者:
どうも、はい

今井通子:
失礼しまーす。

相談者:
ありがとうございました。

(内容ここまで)

ちょうど2年を経ての再相談。

2016年3月1日
夫が出て行って30年目の離婚劇。先延ばしのツケは複雑な財産分与

前回 女70歳 夫67歳 長男40歳 長女34歳
今日 女69歳 夫67歳 長男40歳 長女37歳

自分だけ若返っとるやないか!

 

ま、これぐらいはご愛嬌。

他は、別居中の仕送りなど、細部も含めて話の本筋は一貫している。

だけど、

女 「2年前から毎月10万なんですけども、全部夫の方に行っちゃってんです」

アパート2棟分の金額?
安っ!
どゆこと?

 

相談の趣旨である財産分与の件は2年前からほとんど進展がなく、まさに再相談。

それもそのはずで、女がこれといったアクションを起こした形跡がない。

 

前回の相談の復習

前回の話を要約すると、

夫所有の不動産は全部で4つ。
一つはこの女が住む自宅で、3つが収益物件だ。

収益物件の一つは相続ではなく、結婚後に夫婦で取得したもの。

そのローンが月12万円で、このとき8年残っていたから、あと数年で完済することになる。

 

夫をちょいアゲ

こうしたことを総合すると、少し印象が違ってくる。

夫はやろうと思えば、3つの収益物件のすべての上がりを独り占めすることが出来る。
しかし、一つは妻の取り分として残した。

女は相変わらず自宅に住み続け、月12万ものローンを払い続けている。

女が言うとおり、払わされているという見方も出来るけど、払い続けられる収入があるとも言える。
それも、2棟の収益を絶たれてもなお。

夫が根こそぎ奪ったように聞こえる女の説明は、前回の説明とつなぎ合わせると、妻の生活に支障がないように夫が配慮したと見れなくもない。

 

相談者を物語るエピソード二つ

前回、中川弁護士を感心させたのは、一旦、夫の代理人弁護士によって、管理会社からの振込み先を夫の口座に変えられてしまったことに対抗して、
なんと女は、賃貸居住者に手を回し、家賃を直接女の口座に振り込ませ、そこから管理会社に管理費を支払うよう、カネの流れを変えてしまったこと。

今回の相談で、夫の弁護士から再びの反撃に遭い、結局それが失敗に終わったことが分かるが、弁護士や不動産管理会社を向こうに回して立ち回る女の強かさは健在だ。

今回もそれが明らかにされた。

塩谷 「あなた凄く聡明な方で理路整然と話が出来る方なので、相手方の弁護士と話をすれば先が見えて来る」

ここまで言わせるのは他でもない。
この女が30数年前にやったことを指す。

なんと公正証書遺言を無効にしてしまった。

 

公正証書遺言の威力

真贋(しんがん、本物か否か)について争わないための公正証書遺言なんだけど、確かに訴訟によって無効化された例はある。

本来、公正証書遺言は、公証人が口述筆記するものとされ、利用者に対する公式な案内にもそう説明されている。

が、実際の現場では、概略を本人、あるいは近親者から聞いただけで、慣れた公証人が先に文面を作り、それを読み上げる形で遺言者の承認を得るやり方が横行している。

これだと、意志薄弱な遺言者の場合、近親者の主導で遺言書を作成することが可能なわけだ。

もっとも、たとえそうであったとしても、公正証書遺言を無効にするのは容易ではない。
そういう例があるとは言ったけど、全体から見れば超レア。

当たり前だ。
公正証書の無効が相次げば公証制度そのものが成り立たなくなる。

異議申し立て側が、本人の意志によるものではないということを立証する必要があるが、疑わしきは罰せずが原則の下では、これがもの凄く難しい。

てか、何よりの証拠が、長年裁判官や検事の任にあった公証人が本人の意志を確認したという事実だ。

事案の多くが高裁まで争われているし、最高裁まで行ったものもある。

言うまでもなく、遺言者本人はすでにこの世にいないわけで、事実がどうであったかを確認する手段は限られる。

しかも、この女は当事者ではない。
相続人はあくまで夫で、女は調停に出席することも許されないし、訴訟の申し立て人にも、もちろん代理人にもなれない。

当時は夫と同居してたとはいえ、女は裏で奮闘していたことになる。

 

ものともしない相談者の強靭な意志

そんなことより、アタシが一番驚くのは、これが40年近くも前の出来事だということ。

グーグルどころか、インターネットもない。
パソコンも携帯もない。

知識は書籍。
情報は全て紙。
大半は足を運ばないと得られない。

第一、今だからこそ公正証書遺言が無効になった事例を簡単に知ることはできても、40年前だと普通の人は知る由もない。

そんな中で、弁護士がギブアップした。
公証制度から言えば、これは至極真っ当な判断だ。
普通はそこで全てが終わる。

ところが女は、何かでわずかな希望を見い出し、
四面楚歌の中、法律を調べ、やろうと決め、
病院を回り、カルテを集め、独自に症状の年表を作り、弁護士を動かした。

まだ、個人情報保護なんていう概念が無かったから可能だったとも言えるが、一体何が女を動かしていたのか?

とにかく、女は不可能を可能にした。

 

今日は裁判に臨むにあたっての最終確認

今度の相手は夫だ。

女 「やっぱり裁判しかないのかな?と思っています」

女にとって裁判は手段。
2年間は傷めた羽を修復する期間。

家賃収入が向こうに行ったまではし方なくても、売られでもしたら、夫婦の資産から消えることになる。

塩谷弁護士の説明では、相続で得た不動産は財産分与の対象にはならないが、掛けた労力やカネの請求はできる。

掛けた費用と現在の価値、貢献度と手にした収益、夫婦の関係、etc.
考えただけでも難しい連立方程式だ。

女にとって弁護士のアドバイスは、経験上、一弁護士の意見に過ぎない。

いくら不動産が夫のものでも、妻が請求する財産分与を払えなければ、物件を頂戴するしかない。

 

塩谷 「杓子定規にはいかない」
女  「分かりました」

ヤル気に火がついたもよう。
30数年前の裁判に比べたら屁でもない。

 


回答者も認めたその実力。弁護士がサジ投げた公正証書遺言をひっくり返した女」への3件のフィードバック

  1. 管理人さんのコメントを心待ちにしておりました
    やっぱり公正証書ひっくり返しはとんでもなくスゴイ事なんですね〜

    私なんてネットで調べるのも面倒でコメント待ちですよ

    私が知る限り地主の息子がしっかり働くなんて見たことも聞いた事もない(都会に限るか)
    家賃収入があればなおさら。だいたい自営業(ほぼ車関係)を適当にやってる印象ですが。
    そこになぜかやってきた聡明でガッツあふれる嫁
    (これは珍しいですよね〜)
    ボーッとしてる夫が叱咤激励操られ遺言をひっくり返すという離れ技をきめ不動産を奪取。その後逃げ出すのも無理はない気がするのは私だけでしょうか

    逃げたもののこれまでの夫の態度は不動産を勝ち取ってくれた恩は忘れてないという事ですかね

    でももう終わりにしたいと夫は思った
    まあ普通に考えれば老後を一緒に過ごしたい人お金を残してあげたい人がいるって事ですよね

    いやぁドラマですね
    まだまだ続きますネ
    また相談して欲しいです
    この奥さんどんな人なんだろうか?
    久々盛り上がって読みました
    解説も本当に感謝です

  2. 管理人さんの説明が分かりやすかった。塩谷先生が相談者を褒めていた理由がリアルタイムでは理解しきれていなかったので。
    相談者は一大家で終わらせるには惜しい。弁護士か刑事になっていたら良い働きをしていたと思う。

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