相続放棄で注意すべき単純承認となる行為。それ以前にもっと重大な問題が発覚

(再びパーソナリティ)

今井通子:
お分かりいただけましたか?

相談者:
あはい、分かりました。

今井通子:
なんか、お母さまのことよりお父さまのことの方がちょっと大変そうになっちゃいましたね。

相談者:
そうですね、はい

今井通子:
うん
じゃ、そういうことで。

相談者:
あはい、ありがとうございました。

今井通子:
はい・・じゃ失礼しまあす。

相談者:
はい、ありがとうございました。

(内容ここまで)

自営業だった年金生活者が借金500万?

自己破産レベルなんだが。

 

さて、
坂井弁護士のレクの復習も兼ねて基本的なことを。

まず相続放棄はオール・オア・ナッシング。
これはちょっと考えれば分かる。

だって財産の品目ごとに放棄できるのなら、借金を相続する人なんて誰もいない。

だから、借金を返してもトータルでプラスになるのなら相続すればいいし、マイナスになるなら相続放棄。

注意しないといけないのは、故人と疎遠だった場合。
借金を正確に把握するのは簡単じゃないわけ。

利口な債権者なら、債務者が亡くなってもすぐに相続人に請求せず、相続放棄の期限までの3ヶ月間は音無しの構えでいればいい。

で、一応、これに備えるために限定承認というのがあるにはある。

限定承認とはプラスの遺産の範囲内でのみ借金を相続すればいいという手続き。
これだと、後から借金が判明したとしても最悪でもプラマイゼロで済む。

そんな便利なものがあるのなら、あらゆる相続はとりあえず限定承認にしておけばいいじゃないか。
こう思うかもしれんが、限定承認はほとんど利用されていない。

理由は面倒だから。
限定承認も相続放棄と同様、裁判所を介すことになるけど、相続人が複数いる場合、全相続人が限定承認しなければならないのと、提出する資料とか、承認後の遺産の処分も煩雑。

ちなみに相続放棄は誰との合意も必要なく、単独で可能だ。
どんな遺産があろうが関係なく、特段に準備が必要な資料もない。

 

あと、遺産の分配がゼロで承諾することを指して相続を放棄すると言ったりもするけど、裁判所の承認が必要な相続放棄とは似て非なる行為だということ。

遺産の分配がゼロに承諾することはあくまで遺産分割協議。
相続人であることに変わりはないわけ。

これに対して相続放棄は、相続人の地位を失う。
早い話、相続人として存在しないことになるわけだ。

これからすれば、今日の相談である実家の管理責任などは心配するには及ばない。

相続放棄によって、被相続人の一切の債権・債務とは無関係になるわけで、必然的に管理責任は行政に移る。

遺産の処分に税金が投入されることに釈然としない向きもあるかもしれんが、実は今日のケースはまだいい方。

行政にとって最悪なのは、相続放棄もせずに、かといって管理責任も果たそうとしない疎遠の相続人がいる不動産。
行政としても手が出せず屋敷が朽ち果てるまま放置されることになる。

東京都では条例を改正して、処分できるようにはしたが、掛かった費用を相続人から回収する手間も半端ない。

 

さて、今日の相談。
単に相続放棄すれば済む話ではない。

なぜって、父親の相続によって、相談者の妻と義妹は実家の半分を単純承認してしまっているからだ。
いうまでもなく残り半分は亡くなった母親。

だから、相続放棄できるのは母の持分の二分の一だけで、半分の持分の権利は消えないわけだ。

坂井弁護士の言葉を借りれば「理論的には」。

不動産に価値があれば誰かにあげれば済む話だが、タダでも貰ってくれる人はいない。

どする?

 

どうってことはない。
父の相続処理をやったことにしてしまえばいい話だ。

父名義の財産は、母親がすべて相続する旨の遺産分割協議書を作ればいい。

もちろん、日付は母親の生前でなければならないし、署名もそれなりに見せる必要がある。

あと、通常は添付する印鑑証明書だが、もちろん母親の印鑑証明書を今から取得するのはムリだ。

だけど、印鑑証明書が添付されていないからといって遺産分割協議書そのものは無効にはならない。

あくまで被相続人の預貯金を解約したり、不動産の名義を変えるときには、相続人の印鑑証明が必要になるというだけの話。

遺産分割協議は整っていたのだけど、特段の不都合がないので、名義変更をサボっていた。
こんなストーリーだ。

もちろん、理論的には偽造。
だけど、誰も偽造であることを証明できないし、そもそもそれを主張する人もいない。

たったこれだけのことなのだけど、少なくとも公には弁護士がそれを言うことは許されない。

 


相続放棄で注意すべき単純承認となる行為。それ以前にもっと重大な問題が発覚」への4件のフィードバック

  1. 義理のお母さん、借金してて仕事もやめちゃって、遺族年金で暮らしてたのかしら?
    財産が残っているよりも、借金が残ってるほうが、遺族は団結するわよね。

  2. 弁護士のところに相談に行ったとして、義父の遺産分割協議書の偽造は違法なので弁護士が勧めるとは思えない。
    それとも、日常そういう違法行為を勧めることが多いのだろうか。
    「こういう方法もありますよ、わたしはお勧めしませんけどね」って感じなのかな(笑)

  3. 相続放棄して相続人がいない空き家は、家裁に相続財産管理人の選任を申し立てていきますが、費用は申し立て人持ちですよね。確か100万前後だったかと。

    選任されるまでは、相続放棄しても管理責任が発生する

    管理責任は簡単に行政に移らないと勉強しましたがいかがですかね。

    1. そうなんです!

      私も、そのようなケースでは100万円くらいかかると聞きました。
      でも坂井先生はその点には何も触れていなかったのでモヤモヤしました。

      相続放棄って放棄しても負担しなければならないものがあるという部分を掘り下げてほしかったなぁ。
      編集でカットされてしまったのかしら?

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