災難!相続した田舎の3百坪。売ろうにも百年前の抵当権に紐づく相続人25人

(再びパーソナリティ。相続放棄すれば?と野島弁護士に訊く)

今井通子:
お分かりいただけましたか?

相談者:
あ、はい

今井通子:
はい。野島先生に伺いたいんですが。

野島梨恵:
はい

今井通子:
これを放棄して、例えば税金も払わずっていう・・

野島梨恵:
&#・・

今井通子:
形にすると没収だけじゃ済まない?

野島梨恵:
放棄はもうできないので。(*)

(*)相続放棄の手続きは相続の事実を知ってから3ヶ月が期限。
また、3ヶ月以内であって遺産の処分をしていれば相続放棄はできない。

今井通子:
うん

野島梨恵:
放棄するとしたら・・

相談者:
はい

野島梨恵:
お子さんが・・

相談者:
ええ

野島梨恵:
あなた、お母さんが亡くなったときに、

相談者:
はい

野島梨恵:
これをもう遺産相続しないで放棄するっていうのは・・

今井通子:
あ、そっか。

相談者:
ええ

今井通子:
できますね。

野島梨恵:
それはあ、できるかもしれないけれども。

今井通子:
うん

相談者:
はい

野島梨恵:
そうすると、お子さんは・・

相談者:
はい、はい

野島梨恵:
お母さんのプラスの、財産も、

相談者:
はい

野島梨恵:
全部相続、できなくなっちゃうから。(*)

(*)相続放棄とは相続人の地位を失うこと。
オール・オア・ナッシング。

今井通子:
うん

相談者:
はい

野島梨恵:
それはちょっと勿体ないのかなって気はしますね。

今井通子:
うん、うん

相談者:
はい、分かりました。

今井通子:
はあい

野島梨恵:
はい、よろしくお願いします。

今井通子:
それじゃ失礼いたしまあす。

相談者:
はい、はい、ありがとうございました。

(内容ここまで)

300坪。
広!

200万円。
坪7千円
安!

宅地かしら。
相談者の生家。
畑含む、みたいな。

 

さて、
同じ百年前なのに、
抵当権の相続人が25人で?
土地の相続人は相談者たった一人。

これは、抵当権の被相続人がヒイ祖父さん(相談者のではない)で、土地の被相続人が父親だからだ。

つまり、相談者の祖父も父親も、相続の度に土地の名義変更だけはキッチリやってきたことになる。
抵当権を残したまま。

そんな名義変更が可能か?と言えば、可能だ。
抵当権者が承諾すればもちろん、実は通知すらしなくてもできる。

法務局は名義変更に抵当権者の承諾なんて求めないからだ。

住宅ローンを払ってる人は、そんなハズはないと思うかもしれんが、それは抵当権者が金融機関だから。

ローン契約書には勝手に名義変更できない旨が謳ってある。
物件が契約者名義であることを前提に融資しているので、契約で縛ってるわけだ。

だから、いくら可能だからって、金融機関に無断で名義変更しようものなら一括返済を求められることになりかねない。

ま、普通はそんなことしない。
名義人でもない人の債務の担保になってて、いつ差し押さえられるやもしれない物件を買う人なんていないからだ。

たとえば離婚の際に、妻が自宅を要求するも、ローン名義は夫だったりするときにこうした動機が出てくるらしい。

 

今日の相談者の土地が少なくとも2代にも渡って抵当権を付けたまま名義変更されて何の問題もなかったのは、借金はヒイ祖父さん一代で返し終えていたことと、身内間の名義変更だったから。

ヒイ祖父さんが抵当権の抹消登記をしておけばなんのことなかったのに、無知というか、おおらかというか、個人間金銭貸借のなせるワザだ。

 

祖父や父親の代の司法書士
「抵当権が残ってますけど、調べるだけでもお金が掛かりますがどうします?
売却しないのであれば、とりあえずこのままでも特に問題ないとは思いますが」

と言えばまだいい方で、
依頼された名義変更だけをつつがなく。

こんなところかしら。

 

ここまで予想外の出費が相談者をビビらせる

相談者が費用面のことを心配しているのは、ここまでで、すでに痛い目にあってるからなの。

痛い目といっても、別にぼったくられたわけじゃない。

それは100年前の抵当権を相続した現在の抵当権者を特定する費用。

どんなに安く見積もっても10万円は下らなかったのではあるまいか。

しかも、司法書士に依頼したとき、提示されたのは単価のみで総額は提示されなかったハズ。

これは、別に悪徳司法書士だからではない。
提示したくても出来ないの。

100年前の抵当権の相続人なんて想像だにできないから。

抵当権者の戸籍謄本を取得し、相続人を特定し、そのまた相続人を特定し・・

これを、枝分かれしているルートごとに、健在している末端に辿り着くまで繰り返す。

離婚や再婚、養子縁組も正確に把握しないと相続人は決まらない。

所帯を持って新戸籍が作られれば、戸籍はまた別請求になる。

女性なんかだと、入籍によって、生涯の戸籍が複数の自治体に分かれている。

電話すら通っていなかった時代から全国に張り巡らされた日本が誇る戸籍制度のおかげで、野島弁護士じゃないけど、いつかは必ず終わるんだけどさ。

で、結果は25人。

少ない方だと思うよ。
兄弟10人なんて珍しくない時代だし、50人超えてても不思議じゃなかった。

自治体は、戸籍謄本の請求を郵送で受付けてくれるから、足代はいらないけど、一通あたり750円プラス往復の切手代、プラス往復の封筒代で千円足らず。

支払いは定額小為替(ていがくこがわせ)。
これだけは郵便局窓口で買う以外にない。

25人にたどり着くまでに一体何通請求したんだろう?

特定するためには、対象じゃないことを確認するためのムダ打ち請求も欠かせない。
キングファイル一冊がパンパンになったと思われる。

仮に100通として、実費だけで10万円。

これに司法書士の報酬が加わる。
数万円ぐらいじゃ引き受ける司法書士はいまい。

 

書きながら思ったんだけど、

特定した25人は民法に規定されている法定相続分を基にして割り出しものだ。

つまり、抵当権が一度も遺産分割されなかったという、かなり無理のある前提になっているということ。

もちろん、明示的に遺産として扱われたことはなかっただろうが、数ある相続の中で、一人の相続人が故人の遺産すべてを相続したなんてことは十分にあり得る。

だからって、こんな任意の遺産分割まで把握のしようがないし、相続放棄した人だっているかもしれない。

何が言いたいかというと、25人の署名を集める前に、実態とかけ離れた相続人によって抵当権を外すことの是非について、司法の判断が要るのではないかということ。

いずれしたって、正確を期しても誰も得をしないし、正確を期すこともできない。

それよりもなによりも、消滅時効しているということは、抵当権そのものが存在しないということだ。

じゃあ、単なる誤記だ。

誤記訂正に25人の署名が要るのか?

 


災難!相続した田舎の3百坪。売ろうにも百年前の抵当権に紐づく相続人25人」への11件のフィードバック

  1. 以前、どなたかも言ってたけど
    野島さん、ウルべさんだと聞く気が失せる

  2. この相談は弁護士も嫌がる案件である と回答者の弁護士本人が言う。
    相談者の心配をさらに深めることになる。

  3. 書類だけ作ってもらってハンコ集めは自分でやれば良いんじゃないかな、まだ人生長いし

  4. 管理人さん、タイトルの「抵当権」が、「低当権」になっていますゼ‼
    あっ、もしかしてこんなボロ土地なんか”低”当権で充分やろ、って わざと?(笑)

  5. こういう相談は、完全に管理人さん案件ですね!相談者には、このサイトに気がついてほしい。

    1. 息子さんに生前贈与できるもの全て贈与して、遺産相続のとき放棄してもらう、ってのはどうだろう。

  6. こんな厄介な不動産は、市とか県とか国に寄付出来ないもんでしょうかね?

  7. 書いてなかったが、支払ってる税金はいくらなんだろう?
    300坪総額200万円だと、年数千円~3万円あたりではないかな。
    じゃあ、税金払っとけば。
    そのうちこの問題が世間にはびこって、法律変わるでしょ。

    因みに、上記の人が「寄付できないか」ということですが、相当な価値ある土地なら別ですが、価値のない土地は寄付できません(しかもひも付き)。
    税金少しでも貰えるから。
    寄付できるのならみんなやってます。

    1. 固定資産税なら公示地価等の7割*税額(.4%位か)程度。でも管理費用も掛かるしねぇ
      公共事業の用地買収でもない限り、不動産は負動産に。
      法律も変わらないでしょう、国会議員が動くとかしないと

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